見えないとき・見えるとき

ビルボード・ライブが、「ライブをするレストラン」であって、「お酒が飲めるライブハウス」ではないとは知らなかった。
つまり、おひとり様ってのがなかなかにやや気まずい場所なのだが、ここまできて引き返すわけにもいかないし、
堂々とおひとり様でモスコミュールなんかを飲みながらライブを鑑賞した次第である。


今日のお相手は、土岐麻子さん。
最近自分の中ではやっているシンガーの一人なのだが、今日のライブのコンセプトはズバリ「バレンタイン」で、
ラブソングを多めとのこと。ますます一人でいることが虚しくなってしまったが、
さらに、前回土岐さんを見たのが7月7日すなわち七夕で、その時も似たようなコンセプトだったことを思い出し、
なんというか、もう土岐さんたら、かわいいなぁ。


今回はベースレスでストリングス3名にピアノとドラムスという、ちょっと変わった編成。
ピアノはなんとあの東京事変伊澤一葉さん。そして、チェロはかの徳澤青弦さんだったのだが、
なんとその隣のビオラを弾いていたのが菊地幹代さんだった。
このストリングス二人は、実はついこの前の木曜にも見たばかりだ。
青弦さんは、twitterでフォローしているので、またお目にかかれると思っていたが、まさか菊地さんまで一緒とは…。


今日の土岐さんのライブは、編成も変わっており、時間も1時間強のこじんまりした感じだったが、
割とステージに近く、場所柄からか音量も抑え目で、おかげで全体がよく見え、聞こえてとても心地よかった。
なんといっても、土岐さんの歌が素晴らしい。その声がよく聞こえるのが一番。


その他では、ベースがいないためか、ドラムの音がよく聞こえた。
ちゃんと音量を制御されていたので、うるさいということではなくてね。


とにかく、会場自体には少し戸惑ったけど、ライブ自体はホントによかった。
ただ、同じ場所にまた3月に見に行くんだよね…。



さて、その青弦さんと幹代さんを見た木曜のライブというのは、
恵比寿リキッドルームにて行われた「カルペンティエル地下文学賞」というコンサート。
メインであり、目的は菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラールで、
このバンドもまた相当に変な編成なんだけど、そのストリングスに例のお二人もいらっしゃったわけです。


このイベントでは、まず19時に開場して、いざ入っていくと、菊地成孔さんがCDJを操ってあやしげなDJプレイ?を繰り広げており、それが小一時間続く。
そのDJぶりもさることながら、どう考えても律動がないような状態なのに「ノッて」いたり、
光の当たる部分を避けていたりと、観客側(自分もだけど)の方もなかなか奇妙で、
これ、菊地さんがなんか実験してるんじゃないかとさえ疑ってしまった。


で、そのDJプレイの後に、world's end girlfriendというバンドが、これまた奇妙なライブを繰り広げる。
今回は、BLACK HOLE CARNIVALということで、ツイン・ドラムにツイン・ギターとサックスで、これまたベースレス。
ギタリスト一人がPCとかも操って、打ち込みのループみたいのをベースに音を組み立てていく、みたいなことだと思うんだけど、よくわからない。
ツイン・ドラムで、一人がロックビートを刻みつつ、他方が自由にプレイする、みたいな感じだったが、
そのオカズメインのドラマーの音がよく聞こえなくて、見た目は叩きまくっているのにシンバルの音しかわからず、ちょっと残念だった。
自分の位置の問題かもしれないが、もしPAのミスとしたらもったいない。


で、そのブラックホールカーニバルが、これまた小一時間で数曲を続けて演奏した後、
別のDJ日向さやかさんが黒っぽい音楽をまわしつつ休憩をはさんだ後、いよいよメインのぺぺが登場。
こちらはかなり複雑なところまで譜面に起こしたと思われる奇妙なリズムとメロディーで、
でもそれで踊らせるつもりだったそうだが、あいにく会場は人で埋め尽くされており、踊るどころではなかった。
というか、場所と運が悪く、目の前に立っていた女性が身長やや高めで、さらにもう少し前にも大きめの男性がいて、
残念ながらステージの半分くらいしかちゃんと見られなかった。


つまり、このライブでは、確かに青弦さんも幹代さんもいたのだが、人の頭で隠されて実際には全く見えていなかったのである。
なので、今日の土岐さんのライブではちゃんと見ることもできて、なんだか、何かを取り戻した気がしてちょっとすっきりしたのでした。


今回、菊地成孔さんが暴露した話では、ぺぺの楽曲は、コンピュータで作りこんだ上で譜面起こしをしているそうで、
菊地さんが全て楽譜を書いていると思っていたから、そこはちょっと意外だったけど、
それをちゃんとライブで演奏しているのはやはりすごくて、しかも、ただ技術的に難しいことをやっているというわけではなくて、
なんかこう、耳と耳の間の鼻の奥あたりが持ち上がるような、気持ち悪いようないいような奇妙な感覚を覚えるんだよね。
一種の気分の高揚だと思う。くぅってなる。キモカッコいいの極みかな。


ただ、長時間(4時間くらい?)ずっと立ちっぱで、しかもステージがよく見えないストレスにも苛まれながらライブを見ているのはちょっとつらいかな。
やっぱり、個人的にはステージの前に「ワー」てなるより、席に座ってじっくり聴き味わうの方が好き。



そんなわけで、また明日から現実に戻るので、ちゃんとまとまってないけど、もう寝なきゃ。



お休みなさい。



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